2016年5月5日木曜日

誰も住まない家に咲くツツジ

ご近所に住む90歳のおじいさんと
80代後半のおばあさんが
昨年老人ホームに入居されました。

ぎりぎりまで頑張ってこられたけど、
奥様の足腰が弱くなり、
認知症も進んだことから、
遠方のホームに移られました。

近くで良いホームが見つからなかったし、
病院からのおすすめで
遠方になってしまったとか・・・

はじめ、おじいさんは、
毎日のように電車とタクシーを乗り継いで
1時間以上かけておうちに通っていました。

「家があるから帰りたくてね。」

やはり、我が家がいいのですね。

「タクシー呼んでもらえますか?」
と、何度か頼まれました。

そのうち、だんだん
おじいさんの足は遠のきました。

90歳を過ぎたおじいさんにとって、
遠距離は相当大変だったのでしょう。

だんだん、庭の草が生え放題になり、
荒れてきました。

ある日、
窓ガラスが割られていることに気がつきました。
空き巣に入られたようです。

警察が来て現場検証をしていました。
テレビで見るような指紋採取とか・・・

そのすぐ後、おじいさんが久しぶりに現れました。

菓子折りを持って、

「これが最後のご挨拶です。
「今までありがとうございました。」

家の中のものは全て処分し、
電気も止めて、
本当の空き家になりました。

この年齢で最後のあいさつというのは、
本当に最後になるようで
とても寂しくて・・・

おうちはそのまま空き家にされるそうです。
庭の草はお隣さんが管理されるということで
安心されていました。

おじいさんが去って約半年。

丹精をこめて手入れされていた
塀伝いのツツジの花が満開になりました。

「おじいさん、見たかったでしょうね。」

「最後なんて言わないで、また来てくださいね!」



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